2021/10/13 10:55

あるねぷた絵師の方がおっしゃっていたことに、「ねぷたは夜に浮かび上がるものだ」という言葉がありました。ねぷたの運行は日が暮れてからとなるので、灯りによって絵が映えるように考えているということでした。この話を聞いた前と後ではねぷたに対する見方が変わったように思います。

この言葉をただそのまま受け止めると、現在の技術を使って、「縦横4メートルのディスプレイを使って」「題材の登場人物に扮した人間を写して、状況はCGで描くなどして」「ねぷた後方につけて写した現場の映像をバックにすると」「迫力ある勇猛果敢な武者が目の前に現れているように」「予算とかVRとかはおいておいて」できたりするのではないでしょうか。
それでも、本の中の写真に感銘を受けるように、紙のねぷたならではの良さはなくならないと思います。

パソコンで絵がかけるとかプリンターから写真を印刷できるようになったことが新しかったのは昔の話、ブラシの追従性が向上したり、フィルム撮影ではできないHDRをスマホで簡単にできるようになるのが当たり前となっています。このような状況の中で、紙に描くこと、紙媒体であることの良さを感じることも多くなりました。

その流れの中で得た経験の一つが「カメラじゃなく、写真の話をしよう 嵐田 大志 玄光社 2021」を購入したことです。

ライティングに関する本がないかと立ち寄った本屋の写真コーナーにありました。タイトルに釣られてめくってみると、良い写真が載っていたので購入しました。写真の見え具合が紙と電子で違うのかも気になりましたが、本を購入しました。

私はカメラに興味を持って写真を撮るようになったタイプです。カメラといっても20年も前のデジカメ黎明期に「200万画素と300万画素の違い」とかにやられまくっていた人間です。雑誌、ネットからあらゆる情報を集め、意を決意して購入したのは「SANYO DMC-MZ2」でした。300万画素カメラが登場しましたが、長い動画が撮れる方が活躍できると思い購入しました。実際には動画はあまり撮りませんでした。それから月日が経ち、普段使いはiPhoneです。動画もたくさん撮っています。イベントの写真もグループ内でシェアし、写真をプリントアウトするということもめっきり少なくなりました。かつてのカメラオタクもI’m going to be just like youです。

自分の写真との関わり方を重ねるわけではありませんが、ねぷた絵を描くということについても興味がありました。紙に描くという部分に関してです。もしかしたら今後は紙ではないねぷたも出てくるんじゃないかと思うときもあったからです。

撮影した写真のアウトプットをプリントアウトするかディスプレイ上で表示することについての、紙と電子のメリットデメリットがあると思います。
紙のメリットは、印刷された紙の雰囲気が画像のメッセージ性を補強することではないでしょうか。「カメラじゃなく〜」の紙は写真集のような光沢感のある用紙ではありません。上質なちょっと厚い紙という感じです。印刷された写真が落ち着いた雰囲気になっているのがまた良いと思えます。
風景ものではなく、おしゃれ目なスナップ写真がこういう紙で出されていたと思います。私のイメージではカメラマン的ではなくPhatPhotoとかカメラ日和のほうかなと。
「カメラじゃなく〜」の写真を電子書籍で見てみるとどういった印象になるのかはわかりませんが、写真を見て本を購入しようと決めたような、「なんか、こう、すごく良い写真だな」という気持ちは紙の本の方が強いのではないでしょうか。

手に取れるモノだからこそ楽しいことってあると思います。